酩酊メロウ
期待するだけ虚しいから、求めることを諦めていた関係性の変化。
言葉にされて嬉しいはずなのに、戸惑って目を上下左右に泳がせた。


「本気で、言ってます?」


焦ったあまり、とっくに抜けたと思っていた敬語が口から飛び出した。
そんな私を見て、憂雅さんは赤子を見守る親のような温かい目で微笑む。


「俺としては、ちゃんとケジメをつけたい」

「私、このままでもいいと思ってた」

「嘘つき、そんなわけねえだろ」


飛びつきたいほど嬉しいのに、あからさまな嘘をついてしまう。
憂雅さんはすぐ反応して、立ち上がって私の額を指先でトン、と小突いた。


「だ、だって、周りの人は賛成してくれたの?」

「むしろ周りに急かされてんだわ。絆が結婚したから次は憂雅だなって」


知らなかった。重荷が増えることになるから、結婚を反対されると思ってた。
漠然とした大きな不安が解消されて、安堵で視界が涙がにじんだ。
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