酩酊メロウ
鳴海憂雅という男
あの衝撃の一夜から1か月後。
慣れとは怖いもので、すっかり住み込みの家政婦としての生活が板に着いていた。

だけど憂雅さんのことはよく分からない。知っているのは鳴海憂雅という本名と、私より6歳年上の26歳だということ。
あと、唐揚げやハンバーグといった、子どもが好きそうな料理を好んで食べることくらい。


「高いところは気をつけなよ。脚立使いな」

「お気遣いありがとうございます。もう終わるので大丈夫です」


ところで事務所に出入りするヤクザのおじさんたちは、刺青だらけで顔は怖いけど、私を冷遇したりせずちゃんと労わってくれる。
この前はヤニで黄色くなった壁を真っ白になるまで拭き上げたら、綺麗になったって喜んでくれて「これで好きなもん買いな」とお小遣いをくれた。

大切に扱ってくれるのは分かるけど、なんだか子ども扱いされてる気がする。
私、もう20歳なんだけどなぁ。


「それ終わったら日付変わるからもう帰りな」

「はい、ありがとうございます。おやすみなさい」


ほら、やっぱり子ども扱いだ。でも優しさを無下にはできない。
笑顔で挨拶をして、住まわせてもらっている憂雅さんの部屋に向かった。
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