酩酊メロウ
その後、何事もなかったかのように朝食を作ってみんなで食べた。
すると、トーストした食パンにたっぷりジャムを塗って頬張る流星くんと目が合った。


「ねえ、昨日の夜、澪泣いてた?」


私は驚いて硬直してしまい、目だけ憂雅さんに向けた。
しかし憂雅さんは全く動じずベーコンエッグを口に運ぶ。
そうだった、この人は嘘に慣れてる人間だった。こんなことで動揺しないよね。

それにしても、子どもって唐突にこういうこと言うよね。
なんて言えばうまく誤魔化せるんだろう。とっさの機転が効かなくて目を泳がせてしまう。


「澪ちゃんがいろいろ思い出して泣いちゃったから、俺の部屋で慰めてたんだよ」

「そうなの?オレに言ってくれたら、星奈といっしょによしよししてあげたのに」

「あ、ありがとう。もう大丈夫だよ」


困っていたら憂雅さんが助け舟を出してくれた。
でもそれは憂雅さんが不利になるから。きっと子どもたちにバレたら、琥珀に告げ口されてしまう。


「心配かけてごめんね」

「そっかぁ、ならいいや。てっきり憂雅がいじめてるのかと思った」

「俺がいじめるわけねえだろ、大事な家政婦さんなのに」


憂雅さんは今日も爽やかな笑顔で嘘をつく。
嘘に抵抗のある私は、下手くそな愛想笑いを浮かべてその場を取り繕う。

勘のいい流星くんと星奈ちゃんには「ほんとに?」と疑われたけど憂雅さんは堂々とした態度だったからそれ以上追求されることはなかった。
< 22 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop