酩酊メロウ
背部の天使
「澪ちゃん、ただいま。3日ぶり」


3日ぶりに家に帰ってきた憂雅さんは酒臭かった。
せっかく忘れようとしていたのに、独特なアルコール臭があの夜の出来事を呼び覚ます。


「……また酔ってます?」

「うん、酔わないとやってられねえ」

「何かあったんですか?」


へら、と陽気に笑っていたはずの憂雅さんは、靴を脱いで突然玄関にへたりこんだ。


「憂雅さん、大丈夫ですか?」

「順番間違えてすげえショック。自分が酒癖悪いの忘れてた」

「……何の順番?」

「ん?こっちの話」


気分が悪いのかと心配して同じ視線になってしゃがんだら、憂雅さんは私の体をたぐり寄せて抱きしめてきた。
バランスを崩して憂雅さんの胸に身体を預ける形になる。

すぐ逃げ出せばいいのに動けない。
その時気がついた。たった3日間会ってないだけなのに寂しかったのだと。
< 29 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop