酩酊メロウ
「ならねえよ、女避けが目的で侍らせてるだけ。そもそもタイプじゃねえから大丈夫」

「……そうかよ」


想像よりずっと冷たい言葉を吐き捨てられ、私は露骨にショックを受けてしまった。
聞いていたのがバレていたのか、絆さんには同情を含んだ目を向けられた。

私はいったい何を期待していたんだろう。
相手は損得勘定で動く裏社会の人間。嘘つきな冷血漢だと分かっていたはずなのに。

男の人って、本当に好きでもない女を抱けるんだ。
頭の片隅では分かっていても、言葉にされてようやく実感した。
私はただ、性欲処理にちょうどいい存在だっただけ。
勘違いして惹かれて、危うく哀れな女に成り下がるところだった。

だけど事実を飲み込めなくて、しばらくキッチンに立ち尽くしていると、憂雅さんは絆さんと一緒に外に出ていった。

恥ずかしくて消えてしまいたい。琥珀を見て、私もあんな風に愛されたいと盛大な勘違いしてしまった。
悔しくて苦しくて、その日は自室に閉じこもって静かに泣いた。
だけど立場上誰にも相談できなくて、気がつけば2週間が過ぎていた。
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