酩酊メロウ
「澪ちゃん、ただいま」


2週間音沙汰なかったくせに、ふらっと帰ってきた憂雅さんは、つい昨日会ったかのように笑顔で挨拶をする。
また酔ってる。抱かれて辛い思いはしたくないから、言葉を交わさずそっぽを向いた。

どうせ酔ってるから翌日には忘れてるはず。


「琥珀たち本家に泊まるって。だから俺だけ帰ってきた」

「……」

「澪、こっち向いて」


だけど追いかけて後ろから抱きしめてきたから、思わずその腕に爪を立てて抵抗した。


「いてっ……どうした?」

「さ、触らないでください」

「なんで?」

「私の嫌がることしないって、言ったじゃないですか」


痛がって手を離した憂雅さんに向けて、毅然と対応したつもりだった。
しかし声が無様に震えて、小さな声で訴えることしかできない。

これまで従順だったけど、初めて生意気な態度を取った。
憂雅さんは黙り込んで、じっと私の顔を見下ろしている。
どんな表情をしているのか、怖くて顔を上げることが出来ない。
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