酩酊メロウ
視線を向けていた先の憂雅さんの足が動いた。
乱暴されるような気がして、目をつぶって衝撃に耐える。

ところが片方の頬を軽くつままれただけで、それ以外の異変はどこにもない。
拍子抜けして顔を上げると、憂雅さんは少し意地悪そうな顔で笑っていた。
そのヘーゼル色の瞳は温情に満ちていた。


「どっちに怒ってる?」

「どっちって?」

「女避けに侍らせてるって言ったこと?それともタイプじゃないって言ったこと?」


会ったのは2週間ぶりなのに、自分の発言を覚えてることに驚きを隠せなかった。
その発言が原因だと自覚していることも衝撃だ。

まさか図星を突かれるとは思わず、分かりやすく目を泳がせると憂雅さんはつまんでいた手を離して「狼狽えちゃってかわいい」と笑みを深めた。


「俺が嘘つきなの分かってて真に受けてんの?」

「それは……」

「あれ、本心だと思う?」


本音だと信じ込んだあの発言が嘘?だとすれば何が真実だというの?
< 40 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop