酩酊メロウ
「澪、ゆっくり湯船に浸かったら?」


急いで髪と体を洗って出ようとしたら、のんびり体を洗う憂雅さんに呼び止められた。
そしていつの間にか呼び捨てになっている。


「そんな悠長で大丈夫です?」

「さっき、澪と風呂入りたくて嘘ついた。本当は14時に来る」


時間が無いはずなのにと疑うと、嘘だと発覚した。
些細な嘘に惑わされたことが悔しい。

浴室に戻って憂雅さんの背後に立ち、背中の天使の顔の部分をぎゅむ、とつねった。


「いてっ、つねるのやめて」


痛がる憂雅さんを横目に、広い浴槽に足を伸ばして入る。
安堵の長いため息をつくと、体についた泡を洗い流した憂雅さんが入ってきたから足を曲げた。

憂雅さんは伸ばしていいと言ったけど、足を曲げれば体が隠せるから私としては気が楽。
酔ってる時なら無理やり足を伸ばそうとするであろう憂雅さん。だけど今は「どっちでもいいけど窮屈そう」と呟いて、鼻歌を歌いながら湯船に大人しく浸かっている。
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