酩酊メロウ
「覚えてるって言ったら澪はどうする?」


憂雅さんは初めて私からの質問をはぐらかした。
いつも通り、平気な顔で嘘をつくと思ったのに。


「質問を質問で返さないでください」

「はは、大丈夫。責任取るから」


だけどその大丈夫、は嘘だと思った。
責任を取るなんて、簡単に言わないで欲しい。
女は男が思っているよりずっと単純なんだから。


「ほら、狼少年の嘘だって思ってるだろ。
手始めに素面の俺とセックスして本気の度合い確かめてみるか」


狼少年は、昨日憂雅さんが言った言葉だ。
なんだ、やっぱり自分の発言覚えてるじゃん。


「お酒残ってるんですか?憂雅さん1回が長いからもうしません。流星くんと星奈ちゃん来ちゃいます」

「そっかぁ、ごめんな遅漏で」

「……」

「ふざけてごめんって、許して」


許してとかごめんはすぐ言えるのに、好きとは言ってくれないんだ。

覚えているのに、改めて好きと伝えてくれないあたり、あれは完全に酔いの勢いだと察した。
嘘と分かって期待する私だって、お門違いもいいところ。

絆されつつあるけれど、完全に心を許すのは怖い。
無謀な恋は自分を破滅させる。父に不倫されて狂った母のようにはなりたくない。
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