酩酊メロウ
「うわー、骨折れたかもどうしよう」


18時になって琥珀たちが帰ってきたから、双子は自分の家に帰って行った。
憂雅さんはふたりきりになると、大袈裟に痛がって足の指を見つめている。


「折れませんよ、そんなことで」

「あーあ、怒っちゃった」


眉間にシワを寄せて見つめると、憂雅さんは楽しそうに笑って正面から抱きついてきた。


「癒される、かわいい。俺のそばにずっといて」


こんな甘え方、そんな甘い言葉、素面の時に言われたのは初めてだった。
もし、今ここで好きって言ったら、どうなるんだろう。

この愛しそうに私を見つめる瞳さえ嘘だと思うと、怖くて自分の気持ちが言えない。
嘘だらけの男に愛されたいだなんて、願ってはいけなかった。
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