酩酊メロウ
憂雅さんは今日帰って来ないと言っていた。だとすれば星奈ちゃんかな。まずい、どう言い訳しよう。


「……どこ行く気?」


ところが現れたのは、乱れた髪をかきあげる憂雅さんだった。
急いでここまで来たのか、肩が上下して息が荒い。


「なんで?今日帰って来ないって……」

「琥珀と星奈が、澪の様子がおかしいって言うから嫌な予感がしたんだよ」


憂雅さんは確実に追い込むように一歩一歩近づくと、荷物を持っていた手首を掴んだ。
驚いた拍子にバックから手が離れ、床にゴトンと落ちた。
憂雅さんの手は冷たくて、小刻みに震えていた。


「理由は?」

「……」

「俺と距離を置こうとする理由は?」


黙り込んだら食い下がって、うつむく私の顔を覗き込む。
まさか必死に引き止められるとは思っておらず、苦し紛れの嘘をつくことにした。
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