酩酊メロウ
「もう、この関係に疲れました」


小さな声で呟く。憂雅さんは手を握ったまま、はたと動きを止めた。
怖くて反応を見ることができず、顔が上げられない。


「好きでもない男に抱かれ続けるなんて、精神的苦痛に耐えられません」


トラウマに起因する嘘が怖くて仕方ない。
嘘を最も嫌った私が、傷つきたくないがために最後まで嘘をついて足掻くなんて、実に滑稽だ。

嘘をつけば、呆れて解放してくれると思った。
そう思うなら出ていけ、と絶望に突き落としてくれることを期待していた。

そうしてくれないと、愛されたいと自惚れてつけあがるから。


「びっくりするくらい下手くそだな、嘘つくの」


だけど憂雅さんは柔らかい声で下手くそと笑うと、私の腕を引いて胸に収めた。
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