酩酊メロウ
「離して、下さい」

「離さない、俺のこと狼少年って決めつけて、何言っても信じてくれなかったのは誰だよ」


ぬくもりを知る度、私は弱くなっていた。
嘘に翻弄されてきた人生なのに、憂雅さんを信じたくて、でも心のどこかで裏切られたくないから信じきれなくて、矛盾した葛藤に苛まれていた。

強く求められ、あふれた安堵の涙が頬を濡らす。


「ほら、泣くほど俺のこと好きなくせに」


涙を拭う指先が、離さないように背中に回された手が、その眼差しが愛おしい。


「でも私には、憂雅さんと一緒にいるだけの価値がありません。そのくせに憂雅さんがいないと不安になるなんて、家政婦として失格です」

「価値を見出すのは俺であって、澪が自分を追い詰めなくてもいい」


不安を一蹴する優しい声に涙が止まらない。
「泣くなよ」と困ったように笑った彼はその後、口角をつり上げて意地悪な笑みを見せた。
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