酩酊メロウ
「いい匂いする、憂雅さんの匂い好き」


澪は俺の胸で深呼吸して、ぐりぐり頭を押し付ける。待て待て、こんな甘えられ方初めてなんだが。


「えっ、ちょ……」

「憂雅さん、酔ってフラフラだから抱っこして」


動揺してあたふたしていると、上目遣いでお願いされ、心臓に一撃をお見舞された。

いったい誰だこの甘えん坊は。マジでかわいすぎてしんどい。
澪は控えめでこんなこと恥ずかしくて言えないタイプのはずなのに。


「かわいいでしょ〜、酔いどれ澪ちゃん」

「澪って酔ったらこうなんの!?」

「そう、だから憂雅さんの前では飲まないようにって伝えてたの。
かわいすぎて襲いたくなるでしょ?」

「うん、必死に我慢してる」


触れ合ってると反応してしまいそうでまずい。
必死に煩悩と戦っていると、琥珀が腕を組んで鋭い目付きで俺を睨んできた。


「澪、憂雅さんのことでかなーり鬱憤溜まってたみたい。これからはちゃんと向き合ってあげてよね」


鬱憤ってのは、おそらく関係性をはっきりさせなかった俺への不満だろう。
最近やっと信用してもらえるようになったものの、澪が悩んでいたのは事実だ。


「澪を泣かせたら社会的に抹殺するから」

「大丈夫、手放したりしねえから」


にしても琥珀も琥珀で、脅し方が絆に似てきたな。
苦笑いしながら琥珀を見送り、ドアの鍵を閉めた。
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