酩酊メロウ
「澪、俺の考えてること分かる?」


澪の柔らかい素肌を直で触れて、欲情を誘うように優しく撫でる。
俺の問いに黙り込んだが、目が泳いで酔っていても分かりやすい。


「分かってんだろ、言って」

「私と、えっちしたいの?」


余裕ぶっこいて見下していたつもりが、澪の言葉選びと恥ずかしがる姿に頭を抱えて悶絶する羽目になった。

気持ちを落ち着かせるため、澪の谷間に顔を挟んで深呼吸をする。
だっせぇ俺、動揺するなんて童貞かよ。


「憂雅さん、大丈夫?」

「無理、マジ無理」


ヤクザは皆、口が上手い。俺も嘘をつくのが仕事みてえなもんだし他人を操るは得意だ。

しかし、澪の前ではどうした俺の語彙力。
ボキャブラリーが貧相すぎて澪も困惑してるじゃねえか。


「澪、俺のこと呼び捨てにして」


もはやムードとかどうでも良くて、願望だけが言葉になる。
いい加減“憂雅さん”って他人行儀だからやめてくれねえかなとは思ってた。


「……憂雅」

「もっかい呼んで……」


酔いの影響か、すんなり呼んでくれた澪。
ただ名前を呼ばれただけなのに、嬉しくてにやけヅラで幸せを噛み締める。

おかわりを要求すると、澪は耳元に口を寄せ、色気をたっぷり含ませて「憂雅」と囁いた。


「……誘ってんだろ」

「だめですか?」

「いや、大歓迎」


誘惑されて調子が狂う。酔ったらこんな大胆になるなんて最高かよ。
終始惑わされっぱなしでは理性に抗うことなんてできず、本能のまま肉欲に従った。
< 80 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop