酩酊メロウ
澪が泥酔してよく分かった。俺らは似た者同士だってこと。
そして呑んべぇの俺を心配する澪の気持ちも理解することができた。
酔ってあんなに色気と性欲が増すなら、他の男に誘われた時にコロッとついていきそうで心配にもなるな。

朝、ぐっすり寝る澪の顔を観察しながらそんなことを考える。
するとピクピク震えていたまぶたがゆっくり開いて目が合った。
澪は数秒間停止すると、布団を蹴っ飛ばして飛び起きた。


「憂雅さん!?」

「あれ、また憂雅さん呼びに戻ってんじゃねえか」


この反応、残念ながら昨日の記憶は残ってねえか?


「え……もしかして」

「ああ、昨日澪から誘ってきた」


しかし、そう伝えると急激に顔を真っ赤にしてベッドに戻ってきた。
俺の枕に顔を押し付けて「いやー!」と叫んでいる。
何してんだよ、意味わかんねえけどかわいいが過ぎる。


「覚えてねえの?」

「だ、だってあれは夢かと……」


顔を枕に押し付けたまま受け答えする澪。
耳まで真っ赤にして恥ずかしがっている様がたまらなくて、無理やり顔から枕をひっぺがそうと枕を掴む。


「顔見せて」

「やだ……」

「澪、かわいい、大好き」

「っ、なんでこのタイミングで……」


頑なにだった澪も、好きと伝えると力が抜けて顔を顕にした。
寝転がったまま俺を見つめて照れていたけど、急に顔をしかめて睨んできた。

その顔もかわいいから俺には無効だけどな。


「嘘つき」

「嘘だと思うなら何度でも伝える。昨日の澪がかわいすぎてさらに好きになった」

「昨日のことは忘れてください……」


強がった直後に可哀想なくらい顔を真っ赤にして、泣きそうに目を潤ませる澪。
あーあ、いじめ過ぎて琥珀にチクられるかも。

チクられて後々怒られるくらいなら、この時間を堪能して満たされたい。
結局、酔ってようが何してようが俺は澪を心底好きってことが分かった。


「忘れて欲しいなら呼び捨てして」

「……憂雅のいじわる」

「はは、最高」


呼び捨てにすることを要求すると、昨夜とは違った表情を見せ、それが愛しくて力強く抱きしめた。



『澪の酩酊』END
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