酩酊メロウ
憂雅さんの父は……若頭と同格の地位、理事長の鳴海司水しすい。
荒瀬組ナンバー2の男に会うためには、さすがに覚悟を決めないと一般人の私には無理だ。
「ごめん、俺今から会合があるから一緒に行けないけど」
「ひ、ひとりでお会いしなきゃいけないんですか!?」
しかも、ひとりで対峙しなくてはいけないらしい。そんなの絶対無理、せめて憂雅さんは一緒にいて。
「不安ならついて行って上げようか?」
「凛兄、あんたもこっちだろうが!」
「はいはい、図体でっかくてもかわいいな憂雅」
凛太郎さんが笑いかけてくれたけど、憂雅さんは腕を引いて厨房を離れていく。
ああっ、待って憂雅さん!私をひとりにしないで。
結局、たったひとりでお父様に会わないといけなくなり、私は広い本家の中をフラフラ移動しながら、彼の待ち構える部屋を探した。
厨房から、真っ直ぐ歩いて、突き当たりを右に向かうって言ってたな。
廊下の曲がり角を右に進むと、出会い頭に男の人とぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさい!」
「おっ、よかったー。ギリ会えた」
ここはヤクザの根城。そんな場所で人にぶつかってしまうなんてついてなさすぎる
相手の顔を確認せず頭を下げると、呑気な声が聞こえた。
絶対怒られると思ったのに、怒ってない?
そっと顔を上げると、眩しい笑顔のとんでもない美形の男性が目の前に立っていた。
街を歩けば、根こそぎ女性の視線を持っていくであろう背の高い美丈夫。
人懐っこい笑顔で、物腰柔らかい雰囲気……絶対幹部だ、今度は誰!?
「澪ちゃんだっけ、かわいいね」
「え、えと、あの……鳴海司水さんのお部屋はどちらでしょう」
憂雅さんや絆さんという美形に慣れているはずが、初対面でこんなに愛想を振りまくイケメンに出会ったのは初めてでパニック。
「司水?この先の書斎にいるよ。突き当たりの部屋」
「ありがとうございます、失礼します!」
なんとか切り抜けようと、深く頭を下げて走りだしたら「あのさ」と声をかけられた。
「な、なんでしょう……」
「壱華が君に会いたがってたよ。今度時間がある時教えてって」
「私にですか!?」
「うん、澪ちゃんに興味津々だって。今日は用事があって本家にいないけど、本当なら話したかったらしい」
いろんな人が私に会いたがってるらしい。それほど憂雅さんの存在が大きいものだと知れたけど、緊張してもう訳が分からないから、とりあえずお父さんに合わせて欲しい。
私は「分かりました、ありがとうございます」と無理やり笑って走り去った。
後に、彼の名前が荒瀬颯馬だと知る。
彼は予想通りの大幹部で、組長代理という立ち位置の、とんでもない大物だった。
荒瀬組ナンバー2の男に会うためには、さすがに覚悟を決めないと一般人の私には無理だ。
「ごめん、俺今から会合があるから一緒に行けないけど」
「ひ、ひとりでお会いしなきゃいけないんですか!?」
しかも、ひとりで対峙しなくてはいけないらしい。そんなの絶対無理、せめて憂雅さんは一緒にいて。
「不安ならついて行って上げようか?」
「凛兄、あんたもこっちだろうが!」
「はいはい、図体でっかくてもかわいいな憂雅」
凛太郎さんが笑いかけてくれたけど、憂雅さんは腕を引いて厨房を離れていく。
ああっ、待って憂雅さん!私をひとりにしないで。
結局、たったひとりでお父様に会わないといけなくなり、私は広い本家の中をフラフラ移動しながら、彼の待ち構える部屋を探した。
厨房から、真っ直ぐ歩いて、突き当たりを右に向かうって言ってたな。
廊下の曲がり角を右に進むと、出会い頭に男の人とぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさい!」
「おっ、よかったー。ギリ会えた」
ここはヤクザの根城。そんな場所で人にぶつかってしまうなんてついてなさすぎる
相手の顔を確認せず頭を下げると、呑気な声が聞こえた。
絶対怒られると思ったのに、怒ってない?
そっと顔を上げると、眩しい笑顔のとんでもない美形の男性が目の前に立っていた。
街を歩けば、根こそぎ女性の視線を持っていくであろう背の高い美丈夫。
人懐っこい笑顔で、物腰柔らかい雰囲気……絶対幹部だ、今度は誰!?
「澪ちゃんだっけ、かわいいね」
「え、えと、あの……鳴海司水さんのお部屋はどちらでしょう」
憂雅さんや絆さんという美形に慣れているはずが、初対面でこんなに愛想を振りまくイケメンに出会ったのは初めてでパニック。
「司水?この先の書斎にいるよ。突き当たりの部屋」
「ありがとうございます、失礼します!」
なんとか切り抜けようと、深く頭を下げて走りだしたら「あのさ」と声をかけられた。
「な、なんでしょう……」
「壱華が君に会いたがってたよ。今度時間がある時教えてって」
「私にですか!?」
「うん、澪ちゃんに興味津々だって。今日は用事があって本家にいないけど、本当なら話したかったらしい」
いろんな人が私に会いたがってるらしい。それほど憂雅さんの存在が大きいものだと知れたけど、緊張してもう訳が分からないから、とりあえずお父さんに合わせて欲しい。
私は「分かりました、ありがとうございます」と無理やり笑って走り去った。
後に、彼の名前が荒瀬颯馬だと知る。
彼は予想通りの大幹部で、組長代理という立ち位置の、とんでもない大物だった。