酩酊メロウ
やっと鳴海司水さんが待機しているという部屋にたどり着いた。
深呼吸をしてからそっとノックをする。
ドアに耳を近づけると「どうぞ」と聞き取りやすい美声が聞こえた。

息を整えて「失礼します」と、面接さながらの緊張感でドアを開けると、和室に本が所狭しと並べられていて、書斎のような部屋だった。

司水さんは中央のローテーブルに正座して本を読みながら、ゆっくりと顔を上げた。


「初めまして、澪さん。どうぞこちらにかけてください」

「は、はい!」


手に持っていた文庫本をパタンと閉じ、微笑む壮年の男性は、口元に笑みを携えたまま私を迎え入れてくれた。

憂雅さんは西洋風のイケメンだけど、お父様は和風で端正な顔立ちがお美しい……。
黒髪を後ろに流している髪型と形のいい眉が、上品な色気を醸し出している。

憂雅さんの父親ってことは、50歳は過ぎてるはず。ところが目の前の男性はどう見ても40代にしか見えない。
荒瀬組の男性は、みんな魅力的で実年齢よりかなり若いということが分かった。
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