酩酊メロウ
「かっこいい……写真撮らせて」

「どうぞご自由に」



俺が許可する前から、バッグからスマホを取り出して角度を変えながら写真を撮る。
鳴り響く連写音が続き、もはや動画の方がいいんじゃねえの?と笑みを零した。


すると澪は「今の顔いい!」とはしゃいで、元々丸い目をさらに丸くさせて大興奮。
俺のこと大好きかよ。なんてニヤけたツラもしっかり激写されてしまった。



「澪、今日大学は?」



後で見返したら絶対気持ち悪い顔してんだろうなと思いつつ、早めに帰ってきた理由を訊く。



「教授の身内に不幸があったから講義がなくなりました」

「あー、そういうこと」

「連絡したけど見てない?」

「ごめん、見てない」



スマホ見てなかったのは申し訳ないが、こういう何気ない日常の会話に癒される。
つい1時間前まで、殺るか殺られるかの空気の中でジジイども対立してたもんな。


普通がいかに幸せかって痛感する。俺はおそらく、死ぬまで一生普通とは程遠いシノギで稼いでいくんだろうけど、家庭の中では普通の幸せを噛み締めたい。


外道が幸せを願うなど、世間からすれば笑いもの。
だがそれでいい、真っ当な死に方なんてできはしねえから、せめて生きてるうちくらい好き勝手させてくれ。
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