【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「そっか…」

RYOさんは困ったような笑顔を見せる。

「でもこう言ったらなんだけど…。僕は一応プロのアーティストだし、ただでってわけにはいかないんだ」

「あ…」

そうだった。

わたしったらなんて虫のいい…。

ちょっと考えればわかるようなことなのに、麻生くんのことばっかり考えていて気づかなかった。

RYOさんが親切なのにすっかり甘えていたんだ。

情けなくてまた涙が溢れた。

「ごめんなさい、RYOさん。私、帰ります」

そう言い終わらないうちに玄関に駆け出した。

恥ずかしい。

私はぜんぜん子どもだ。
< 105 / 353 >

この作品をシェア

pagetop