【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
ふたを開けると、桜色のスティックが顔をのぞかせる。

「かわいい…」

ほんのり色を染める程度の可憐なピンク色。

私はすっかり気に入り、鏡に向かった。

そしてゆっくり唇に色を重ねていく。

ぱっと花が咲いた。

鏡の中の私はどこか恥ずかしそうに、でもしっかりこちらを見つめ返している。

ほんの少しだけ大人になった自分がそこにいた。



――かたん。


突然物音がした。


そこにいるのは誰?






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