【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「RYOさん!」


ドアのそばにRYOさんが立っていた。


「アヤちゃん、かわいい」

やさしく笑いかけられたけど、私はちっとも笑えない。

だって、ずっと黙って見ていたってことでしょ?

耳までかあっと熱くなる。

「ごめんね。あんまり一生懸命だったから声かけられなくて」

私が動揺していることに気づくと、RYOさんはすまなそうな顔をしてみせた。

そして

「それじゃあ僕の番ね」

と言って私の後ろ側にまわった。

「この口紅気にいった?」

おずおずとうなずく私。

桜色…かわいらしくて大好きな色。

「でしょ。アヤちゃんのイメージって思って取り寄せたんだよ」

「え?」

まさかそんなこと言われるなんて思ってもいなかったので、なんて答えたらいいかわからない。

「何にも汚されていない君だから、この色って思ったんだ」
< 116 / 353 >

この作品をシェア

pagetop