【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「でも、僕にだけ本当のかわいい沢木さんを見せてくれるっていうのもいいか…」

麻生君は意味深な笑顔を浮かべると「さ、勉強しよう」と参考書をテーブルに並べた。



とくとく…。

しんとした部屋の中で私の心臓の音だけが規則正しくリズムを刻んでいる。

麻生君にも聞こえているかもしれない。

そう考えたら、余計に恥ずかしくなった。



「沢木さん」

びくっ。

そんなふうに名前を呼ばれるだけで私は動揺してしまうのに、麻生君はいつもの涼しげな顔。

私と二人きりでいてもなんともないんだね。

「は、はい」

「ここ。この訳し方、沢木さんならどうする?」

向かい合わせで座っていた麻生君は、するりと私のとなりに移動してきた。

そして参考書に付随している問題文の英文を指差した。


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