【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
それでも中の二人に気づかれてはいけない。

逃げ出したいという気持ちと、この行為を見ていたいという欲望が交錯する。

ついこの前私の胸に滑り込まれた彼の手。

その手は今私じゃない誰かに触れている。

そう考えるといてもたってもいられない。

私の体の芯の部分がじんと熱くなった。

私が触れられていないいくつもの部分をここにいる女はこれでもかと執拗にせめたてられ、そのたび甘ったるい声がこぼれる。

耳を覆いたくなるような甘い声。



下唇からうっすら血の味がする。

いつの間にか私は唇をかみ締めていた。





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