【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
――トクン。

鼓動が聞こえる。

麻生くんの瞳はきれいでまっすぐで本当に見透かされてしまいそう。

まさかね…と思いつつも、私は身を硬くして彼の言葉を待つ。



「好きな人…その人のこと考えていたんでしょ」


麻生くんの顔には表情がなかった。

だから、何を考えてそんなことを言っているのかちっともわからない。


「好きな人?」

「そう。その人のことばかり考えている。気がつけばいつも」

「違う、そんなことない…」



怖い。

体が震えていた。

私は一言もそんなこと言っていないのに…。

麻生くん、どうしてそんなことがわかるの?

どうして?




< 160 / 353 >

この作品をシェア

pagetop