【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
説得力があったのだろう。

ランのきついまなざしが一瞬ゆるむ。



「信じていいの?」


私はこくりとうなずく。


「よかった…。私が麻生くんのことを好きなのを知ってるから、アヤ、意地悪して麻生君に近づいたのかと思った」

「そんなわけないよ。麻生くんみたいな人が、私のことをそういう対象に見るわけないじゃない」


声を震わせないように…。

ついてしまった嘘を今さらひっくり返すことなどできない。

私は罪の意識にさいなまれながらも、ランを欺くことだけに気を配る。



「麻生くん、この前の試験で順位が落ちたのよっぽどショックだったのかもね。それできっとアヤと一緒に勉強をだなんて考えたのかなあ」

「そうだよ。私が英語得意なの知ってるから勉強の方法とか聞かれただけなの」

「ふうん」

「それにさ、私と一緒だったら意識することもなく勉強に集中できるじゃない」


< 176 / 353 >

この作品をシェア

pagetop