【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「大丈夫だから。アヤちゃん、君は戸惑っているだけなんだよ」


温かい。



RYOさんの腕のなかに私はいた。

大切なものをやさしくくるむようにして、RYOさんは私を抱きすくめる。

不思議なほど私の心は穏やかで、このままずっとこうしていたい、だなんて考える。



でも、そんなときにでも突然頭に浮かぶのはランの顔。

私は、ランを失いたくない。



「RYOさん、私、自分がわからないの。本当の自分が何者なのか」


正直な気持ちだ。

ほんの短い間に、私の中に私が知らなかった私がいて、そして複雑な感情が交錯してRYOさんに会う前の私が本物なのか、RYOさんと会ったあとの私が本物なのか、私にはさっぱりわからなくなってしまった。


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