【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「本当の自分なんてあるのかな」

「RYOさん…?」

「僕だってさ、わからないよ。こうしてアヤちゃんと一緒にいるときの僕が本当の自分なのか、それとも他の人と一緒にいるときの僕が本当の自分なのか…」



ずきん。

胸が痛む。

だって、私にはわかるから。

RYOさんの言う「他の人」はきっとあの女の人。

私とはぜんぜん違う大人の女性。



「きっとさ、誰だってそうだと思うよ。本当の自分が何者なのかなんて誰もわかってなんかいない」

「じゃあ…」

RYOさんは私の言葉を制するかのように、もう一度髪をなでる。

「今のアヤちゃんが本当のアヤちゃんなんだよ。それでいいじゃない。本当の自分が何者かなんて、たぶんどうでもいいことだよ」
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