【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
けれど…。

じわりじわりと麻生くんが近づいてくる。



「麻生くん、しっかりして! おかしいよ、いつもの麻生くんじゃない」

怖かった。

何が起ころうとしているのか予想もできなくて。


「いつもの麻生くん? 何それ?」

「だって、麻生君は、いつだってやさしくて、品行方正で。思いやりがあって、頭もよくて」

「ふうん、僕ってそうなんだ。それがいつもの僕だって言うんだ」

「そうだよ、だって麻生君は…。ねえ、そうでしょ?」


必死だった。

麻生くんの目の色が普通じゃないことは明らかだ。



殺されるかもしれない。


そう思った。


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