【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「やめてよ、やめてよ、麻生くん」

「いやだね」

「お金持ちで頭も良くて美形で、こんなにも麻生君は恵まれているのに…。こんなことくらいでどうして??」

「僕が恵まれてる…?」

一瞬彼の手が緩んだ。


「助けてーーーっ!!」



力の限り、喉が破けてしまうくらい大きな声で私は叫んでいた。

お願い。

誰か、この声を受け止めて。



けれど、麻生くんの手がまた私の喉にかかり、私は声をなくした人形同然になってしまった。


「無意味だよ。今日は母さん、仕事でいないから。それにうちの家、防音設備完璧なんだ」


「たすけて…」


私は声にならない声で口をぱくぱくさせる。


それを見て、麻生くんの口元がゆるむ。

満足げに、うなずきながら。




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