【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「やあ」


向かいのマンションの窓辺に男が立っていた。



「嘘…」


年は三十くらいだろうか。

短髪の黒髪をを軽く右手でなでながら彼は笑った。


「は、はじめまして!」


身を乗り出して、それに答えるラン。

その目はまっすぐに男を捕らえていた。


「君、この部屋の子?」

「いえ、私は遊びに来た友人で、こっちがこの部屋の主です」


そう言って、ランは窓下に隠れていた私の首根っこをつかまえて引っ張り出す。


ちょ、ちょっと待ってよ。

なんでこうなるの??


こうなると私の心の叫びはなんの意味もない。

あとは、私が彼とはまったく面識がないようなそぶりをするしかない。



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