【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「社長が事故で死んだその前日の深夜、僕はガレージから出てくるマコを見たんだ」

RYOさんの顔色がかすかに青ざめて見えた。

口の中が乾くのか、何度も唾液を飲み込む。

「社長は車を他の人にさわられるのを嫌がってね。いつも鍵がかけられていた。だから誰もが自由に立ち入ることはできなかったんだ。あの時間帯、社長夫婦は例の秘め事に興じていたはずだから、マコはそのタイミングを狙ってガレージの鍵を手に入れることに成功したのだと思う。前日までは車にはなんの問題もなかった。だから車に手を加えられるとするなら、それは夕方から翌朝までの時間だけ。しかも鍵はずっと社長の手元にあったのだから」

「でも、それが事実だとしても、ご両親のそういう…」

口に出すのが恥ずかしかった。

「SMプレイ?」

頬が熱を帯びるのを感じながら、私は小さくうなずく。

「…そういう場面を麻生くんが見てしまったって、RYOさんはどうしてわかるの?」
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