【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「僕はさ、社長の弟子みたいなものだったからね、いろいろ命じられたんだ。ある晩、社長から呼び出された。新しい鞭と拘束具を持ってくるようにと。だから夜中、僕は街に出て買ってきたよ。そしてそれを社長に届けた。そのときさ、社長の寝室をマコが覗いているのを目撃したのは」

再び吐き気をもよおした。

何度聞いても湧き上がるのは不快な感情。

「それにね、見てしまったんだ。マコの日記帳を。そこにはこう書いてあった。
『どうしてパパは新しいお母さんが来るたび、いじめるんだろう。きっと僕を産んだお母さんもあんなふうにいじめられるのが嫌で逃げ出したんだ。このままじゃ、きっとリサコさんもいなくなってしまうよ。パパはきっとあんなひどいこと、絶対にやめないだろう。リサコさんが逃げ出してしまう前に、早くなんとかしなくちゃいけない…』
そう書いてあったんだ」

「麻生くん、かわいそうだよ…」

「そうだね。でも、納得がいくだろう。マコが父親を殺したいと思う気持ちに」
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