【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「帰らないで…」

消え入りそうなほど弱弱しい声だったが、確かにそう言った。

「ラン!」

私は踵を返し、ランのベッドに駆け寄る。

そしてひざを折った。

毛布を意味もなく力を込めて握り、私は唇をかみ締める。

「ラン…会って話がしたかった」

するとランが顔をこちらに向けた。

彼女ははらはらと涙を流す。

食事を取らないと聞いてはいたが、かなり痩せてしまったようだ。

ランの顔は小さく目ばかりが異様に輝いて見えた。


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