【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「前にさ、初めてのときは経験豊富な人がいいって私言ったでしょ」

「あ…うん」

「でも、本当はあれ嘘なの。本当はね、一番好きな人がいいってずっと思ってた」

「ラン…」

「だからね、私、後悔していないの。一番好きな人だったから」



ランの想いがかなって一番好きな人と結ばれることができたはずなのに…。

それなのに、どうしてそんなに悲しい顔をしているの。

かといってそれ以上深く聞くこともできないし。

私は口を開くことにためらっていた。



「でも、でもね、私、幸せだと思えなかった。思えなかったの…」


嗚咽だけが鳴り響いていた。

苦しくて悲しくて耳を覆いたくなるような、ランの声。





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