【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「次は若葉町十字路、若葉町十字路…」

夕方の市営バスにはたくさんの人が乗っている。

それぞれが一日の仕事を終え、緊張感が緩んだ表情だと見てとれる。

そんな中、ひざに抱えたバッグの持ち手を必要以上に強く握る私。

これから起こることを考えるといても立ってもいられない。



「ねえ、ママ。今日はシチューが食べたいな」

隣には6、7歳の男の子と母親らしき女性が座っている。

「そうね、パパが帰ってきたら三人で一緒に食べましょうね」

女性が男の子の頬を優しく撫でる。

すると男の子は甘えたように母親の肩にもたれかかった。
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