【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
蘇る記憶
「あの…」

つり革につかまっていた男性が突然声をかけてきた。

「今日は来られないんですか?」

30歳代と思われる男性は親しげな笑顔を向ける。

向こうは私のことをよく知っているような口調だ。

でも、一体誰だろう。

思い浮かばない。

「ごめんなさい。どこかでお会いしましたっけ?」

すると男性は直立不動の姿勢になりこう言った。

「おかえりなさいませ」
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