【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「いいよ、沢木さん。これでもうさよならだ」

麻生くんの声が震えていた。

感情を押し殺すかのように一語一語かみ締めるかのように発音する。

「ちょっと待って。麻生くん、それってどういう意味?」

胸騒ぎがした。

麻生くんの言うさよならとは、想像以上に深い意味があるのではないのか。

「ねえ、麻生くん。麻生くん!!」

二階の窓辺に再び目をやったが、彼の姿はすでにそこにはなかった。
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