【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
私は門扉を押し開いた。

さっきまでのためらいはどこに行ってしまったのか、何の躊躇もなくドアを開ける。

「麻生くん! 麻生くん!!」

高い吹き抜けのある玄関ホールに私の声だけがむなしく響いていた。

けれど、彼の応答はまったく聞こえてこない。



まさか…。



脳裏によぎるのは、残酷すぎる光景ばかり。

鳥肌が全身にざわざわとどよめき声をあげる。



「麻生くん、待って! 絶対だめ!!」


スニーカーが宙を舞う。

玄関の大理石に落下しただろうか。


私はただ前を向く。


そして麻生くんの部屋へ続く階段を一気に駆け上った。
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