【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「あいつのマンションはうちの会社名義だから。僕ならなんとでもなる。すべての部屋に隠しカメラをつけるなんて簡単なことだよ」

「それじゃ…私が初めて、あのマンションの部屋で行なわれていたことを見た日も…」

「ああ。もちろんだよ。感動したな。あんな行為見ただけで、動転してしまう君に。あれはあの日の僕自身だよ…」

体が動かなかった。

恐ろしい事実を突きつけられ、息をするのがやっとだった。

「でも、でも…」

「僕は思い出したんだ。父さんが死んで、母さんはやっと解放された。そう。解放されたはずだったのに…」

麻生君の唇から血がにじむ。

「でも、母さんは…結局変わらなかった」

「それって…」


私は気づいてしまった。

麻生くんがあのマンションにカメラを設置したのは、母親を、リサコさんを監視するためだということ。

きっとあの日、RYOさんとの行為に身を焦がす母親を、麻生君はじっと見つめていたんだ。


父親から自動車の仕組みを学び、彼は工学的なセンスを身に着けていた。

誰にも気づかれず監視システムを作ることなんて簡単なことだ。



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