【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「ごめんなさいね、お構いもできず」


ロングスカートにアンサンブルを身に着けた麻生くんのお母さんは控えめで優しげな印象だ。

リサコさんとは対照的な清楚な女性。

この人だったら大丈夫。

きっと麻生くんは幸せになれる。

そう思った。


「すみません、私たちこそ無理を行って押しかけたりして」

私たちは深く頭を下げた。

病室の外の廊下も、また室内と同じく真っ白だ。

まだ何色に染められていないキャンバスのよう。

まるで麻生くんの頭の中みたいね、なんて私はこっそり考える。

「あの、これから麻生くんは…」

「きっとここだと住みづらいでしょうから、私の田舎につれて帰ります。そこから私たちもまた親子をちゃんとはじめようと考えているんです」

彼女は悲しそうに、でもすこしだけほっとしたように笑った。


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