【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
麻生くんのお母さんと別れてから、私たちは並んで歩いた。

「麻生くんさ、嫌なこと全部忘れられてきっとよかったんだよ」

「うん」

「あのお母さんならさ、大丈夫だよ」

「うん」

「きっと幸せになれるよ、麻生くん」

「うん。…絶対に幸せにならなくちゃだめだよ、麻生くんは」

「うん」



私もランももう何も喋ることできなかった。

何度こすっても涙は流れる一方で乾く気配はない。



「ラン、寂しくない?」


私はランが心配だった。

あんなこともあったし、彼女の傷が癒えているとは思えない。


「寂しいよ。でもさ、今度麻生くんに会ったときに好きになってもらえるような女になるんだ。自分を磨くよ」


ランの口調は心なしかしっかりしていて、私は少しだけ安心した。
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