【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
それから、私はもういちど深く息を吸い、空を見上げた。


『さよなら、RYOさん。さよなら、リサコさん。今度生まれてきたら、幸せになって』


私はあんな目にあったのにRYOさんを憎みきれないでいた。

どうしてだろう。

彼もまたかわいそうな人だったからだろうか。

そして、私にはまだわからない、人を愛する痛みを彼から教わった。



「ちょっと、アヤ! 何空に向かってぶつぶつ言ってんの」

向こうでランが文句を言っている。

「ごめんごめん。今、行くから!」



私は一歩踏み出した。

地面を蹴るとその温かさが靴の裏を通して伝わってくる。

生きてるんだ。

私、生きてる。



――bbbbbbb。



携帯が震えた。


メール?


誰だろう。




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