【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「これから僕が君に何をするか心配してるくせに」

ほんの一瞬、声が変わった。

さっきまでのふざけた言い方じゃない。

真剣な言い方。

「え…」

なんて答えたらいいかわからなかった。

またあの光景が脳裏をよぎる。

「アヤちゃんてさ、まだなんの色にも染まってないんだ」

向かいに座る彼が身を乗り出す。

ほんの少し距離が縮まったことで私の鼓動がトクトクとリズムを刻み始めた。

「真っ白なキャンバスに色を染めるってどんな気分だろ」

彼が舌なめずりをしたような気がした。

気のせいでなければ。



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