【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
彼の手が私の手をぎゅっと握る。

そして「行こう」と強引にひっぱった。


「あ、麻生くん…」


麻生マコトと私は手に手をとって学校を抜け出そうとしていた。


「ア、アヤ! どうして??」


背中からランの悲痛な声が追いかける。



よく見えない目だから、なんとか正気を保っていられたのだと思う。

だってすれちがう人たちはみんな私たちを見てびっくりしているに違いない。



「麻生!」

正面からやってきた先生が声をかける。

でも、彼は少しも動じることなくこう答える。


「先生、俺沢木さんのめがね壊しちゃったから、ちょっと直しに行って来ます。彼女、強度近視だからめがねなしだと授業にならないので」


え?


なんで?


なんで麻生くんが知ってるの。


私が強度近視だってことを。
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