【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「ごめんね」

めがねやさんのベンチで向かい合わせに座る麻生くんはやっぱり素敵だった。

0.01のこの視力だから輪郭はおぼろげだけど私にはわかる。

彼がいかにかっこよくて光り輝いているかを。

だって応対するめがねやさんのお姉さんの声がときどきうわずるもの。

「お客様…」っていう声がなんだか色っぽくて。

私のほうがどきっとしちゃう。

メスの習性とでもいうのかしら。

魅力的なオスの前ではこうも本能的になってしまうものなの。

見えない目だから、たぶん私はここまで感じ取ることが出来るのだと思う。
< 88 / 353 >

この作品をシェア

pagetop