【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~
「もしかして、俺のこと気遣ってくれてるの?」

麻生君は笑い声を押し殺しているみたいだった。

不自然に口を一文字に結んでいる。

「だって麻生くん調子悪かったんでしょ。風邪引いたとか」

「まあね、いろいろ。それより沢木さんこそどうして? 君にはありえない順位だったじゃない」

「あ…まあ、それにはいろいろ事情が…」

しどろもどろの私。

だって言えるわけないじゃない。

前の晩に、隣のマンションの男女の絡みを見てしまって興奮して眠れなかっただなんて。



「お客様、お待たせしました」

よかった。

いいとこでめがねやのお姉さんが割り込んでくれた。

私はすっかり元に戻っためがねをかけなおし、席を立った。




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