貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
「けど、君は僕に対して嘘をついていたよね?何度も合コンに行っては帰りに誰かと消えていたようだし、給湯室では僕のことをあることないこと吹聴していたよね?そんな人間の何が信用できる?挙句の果てに今、山本さんまで傷つけようとしたね?」

声からは感情の揺らぎが感じられないのだけど、給湯室は底冷えするような冷たい空気に包まれる。
神山透は口角を上げて、辛辣な言葉を投げかける。

「妊娠しているんだって?おめでとう。でもそれは誰の子だい?僕の子供ではないよね?だって僕と君の間で、何かあったとしても、それは半年以上も前の話だもんね?その頃に子供を授かったのならば、もう安定期も過ぎてお腹もだいぶ出てきているはずだよね?」

君は今妊娠何ヶ月なんだい?

神山透は張り付いたような笑みを浮かべて紺野洋子に問いかける。

「それとも妊娠していないというのならば、どうしてそんな嘘をつくんだい?」

もううんざりなんだよ。君に振り回されるのは。

そう、吐き捨てる神山透の体から、ユラリと本来見えるはずのない、暗く揺らめく炎が見えた気がした。

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