貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
 給湯室の中にいるのは、恐らくほんの少し前まで同じ様に噂話に花を咲かせていた営業1課の友人(・・)達。まさか自分のいないところで、こんな毒気がたっぷり含まれている会話で盛り上がっているなんて。 
 社内ゴシップに目ざとい彼女らの耳に入ってしまったということは、この話が社内中に伝わるのも時間の問題であろう。一体どこまでこの噂が広まってしまっているのか想像すれば目眩がする。

『大人しくしていれば、会社に何か言ったりはしない』

 ふと給湯室でそんな事を匂わせていた神山透を思い出す。あの野郎……結局約束を破りやがったんだな。
 
 洋子はギリリと歯ぎしりをする。
 自分の預かり知らぬところで、とんだ恥をかかされていたものだ。
 これも全てあいつ、いつまでも思わせぶりな態度を取り続けていた神山透の所為である。
 自身の所業は棚に上げ、洋子の怒りは増していく。噂話のネタにされた屈辱的な思いも相まって、胸の内にはマグマの様に熱くドロリとした、何もかもを焼き尽くすような激しい感情が沸き起こる。

 ふと顔を上げれてみれば、前方からはビジネスバッグを手にした神山透が歩いてくる姿が目に入る。

「ちょっと神山さん!どう言うつもりなのよ!」

 居ても立っても居られずに、思わず洋子は激しい口調で神山透に詰め寄った。

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