貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
「改めて言うとやっぱり少し恥ずかしいんですけど……。僕はいつだってそういう気持ちだって、どうか覚えておいて下さいね」

 そう言うと腕を伸ばして私をぎゅうと抱き締める。

「えっと……。あの、嬉しい……です」

 どうして神山透は私のことをここまで好きだというのだろう。戸惑う気持ちもまだあるけれど、やっぱり好きな人にそんな究極の愛の言葉を告げられたならば、嬉しくて泣きたくもなってくる。
 躊躇いがちに口を開くと、神山透も嬉しそうに顔を綻ばす。
 
「そう言って頂けると、僕も嬉しいです。今は紙の指輪ですけど……。いつか、本物もして頂けますか?」
「はい。お金を貯めて、いつか私もプレゼントしますから。素敵な指輪、一緒に買いに行きましょうね」

 潤む瞳をぐっと堪えて神山透の体に腕を巻き付けて、私もイエスと返事をすると、イケメンは更にきつく体を抱き締めてくる。
 
「じゃあ『いつか』なんて言わないで、明日にでもこのジュエリーショップに行ってみましょうか?ネックレス見るついでに指輪も一緒に見ちゃいましょう!」
「え?え?いや、ネックレスはともかく指輪を見るのははまだ早いと言うかなんというか……」
「でも、お互いの意志が確認できたんですから善は急げってことで!見るだけなんですから大丈夫ですって!」

 突然の急展開に、嬉し涙はどこへやら。
 一石二鳥だと勢いづく神山透を何とか止めようと、慌ててしまう私である。

 社内で一番仕事が出来る男を論破できる自信はない。
 けれど、こればかりは私の、いや、二人のペースで進みたいところである。

 神山透の浮かれっぷりに、こちらまで胸の奥が甘く締め付けられるような気持ちになりながらも、この暴走特急みたいな男子をどうやって落ち着かせようかと思案する。
 そんな、多分今世界で一番幸せで、贅沢な悩みで頭を抱える私なのだった。
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